こども家庭庁におけるいじめ防止・不登校対策について
日付:2025年2月6日 13:00~14:30
講師:こども家庭庁 ご担当者様
こども家庭庁によるいじめ防止・不登校対策について学びました
2025年2月6日、こども家庭庁のご担当者様を講師に迎え、いじめ防止や不登校対策について学ぶ機会を得ました。こども家庭庁は、文部科学省が担当していたいじめ・不登校対策に新たに関与し、令和5年4月から活動を本格化させています。今回の学びを通して、現状の課題と今後の展望について考えました。
いじめの現状と課題
令和5年度のいじめ認知件数は全国の学校で732,568件にのぼります。この数の高さは問題視されるべきものではなく、学校現場がいじめをしっかりと認識している証でもあります。
一方で、「重大事態」に該当するいじめが増加していることは、こども家庭庁としても深刻な問題意識を持っており、いじめが原因で子どもの生命や心身、財産に重大な影響を与えるケースが増えていることが懸念されています。
不登校の現状と背景
現在、小中学校における不登校の児童生徒は約34万6千人、そのうち学校内外で専門の相談や支援を受けていない子どもは約13万4千人(38.8%)に上ります。
不登校の要因としては、
- 学校生活に対する意欲の低下
- 不安・抑うつなどの心の問題
- 生活リズムの乱れ
- 学業不信や宿題未提出の頻発
- いじめ被害を除く友人関係の問題 が挙げられます。
これまで、不登校は思春期特有の問題と考えられていましたが、発達障害や家庭の事情など、より多様な背景があることがわかってきました。文部科学省が実施した調査では、教師が考える不登校要因と、児童・保護者が感じている要因には大きなズレがあることも明らかになりました。例えば、教師が「いじめ被害」を要因として挙げた割合は4.2%ですが、児童は26.2%、保護者は29.2%と、当事者との認識に差があることが課題として浮かび上がっています。
こども家庭庁の取り組み
こども家庭庁は「こども真ん中社会」の実現を目指し、学校だけでなく地域全体で子どもを支える仕組みを推進しています。その一環として、文部科学省と連携し、社会総がかりでのいじめ防止対策と、誰一人取り残されない学びの保障を推進しています。
特に、自治体の首長部局が専門家(心理・福祉・法律)の協力を得て「いじめの相談から解消まで」一貫して対応する仕組みを構築中です。モデル事業として全国12自治体で実施され、学校外からのアプローチによるいじめ解消の取り組みが進んでいます。
地域と学校の連携
「いじめ防止等に係る地域と学校及び教育委員会との連携」に関しては、学校単独ではなく、地域全体で子どもを支える必要性が強調されました。例えば、旭川市では一人一台端末に相談アプリを導入し、学校や教育委員会を経由せずに直接自治体へ相談できる仕組みを作り、認知件数が約3倍に増加しました。これは、学校には相談しづらい子どもたちの受け皿として機能している証拠です。
また、熊本市では被害者や保護者だけでなく、第三者の助言を得ることで、冷静な話し合いが可能になり、問題解決の糸口を見つけることができています。
いじめ防止・不登校対策の今後
いじめの背景は複雑であり、警察や経済産業省、総務省、法務省なども連携し、さらなる強化が求められています。具体的には、
- いじめ未然防止教育のモデル構築
- 重大事態調査報告書を活用した質的分析のための専門家会議の新設
- 地域における不登校児童への切れ目のない支援事業 などが進められています。
所感
今回の学びを通じて、いじめや不登校問題の現状と対策について深く考える機会を得ました。これらの課題は学校や教育委員会だけで解決するには限界があり、地域ぐるみで対応できる体制の構築が求められています。
また、不登校の背景は多様であり、一律の対応ではなく、家庭・学校以外の「居場所づくり」や相談しやすい環境の整備が重要であると感じました。
今後も「誰一人取り残されない学びの保障」を目指し、子どもたちのSOSを見逃さない支援体制の構築に取り組んでいきたいと思います。
全国の病院における公立病院の役割と地域医療連携推進法人制度
日付:2025年2月6日 14:30~16:00
講師:総務省、厚生労働省 ご担当者様
今後の自治体公立病院の在り方について
地域医療構想に基づく自治体病院の方向性
少子高齢化が進む中で、自治体が運営する公立病院の在り方が問われています。現在の地域医療構想では、団塊世代の増加を考慮し、病床の数だけでなく病床機能の最適化が求められています。今後は、急性期医療だけでなく、外来医療や在宅医療、介護医療といった幅広い医療サービスの充実が重要視されます。
また、2025年を見据えた医療計画が進行中であり、新たに2040年を視野に入れた医療提供体制の整備が進められています。治療中心の医療から、治し支える医療へとシフトすることが求められています。
公立病院の現状と課題
総務省の調査によると、公立病院は全国の病院数の10.5%を占め、病床数では14%に相当します。特に、へき地医療拠点病院の59.4%や救急救命センターの36.5%を担っており、採算が取りにくい病院の多くが公立病院に依存している現状があります。
公立病院の数と病床数は一貫して減少しており、令和5年度の病院事業の決算では、2,099億円の赤字が発生しました。新型コロナウイルス対応のための国庫補助金(3,941億円)の減少も影響し、全国の公立病院の70.4%が赤字経営となっています。
公立病院経営強化の取り組み
各自治体では、公立病院の経営強化プランを策定し、以下の施策を進めています。
- 役割・機能の最適化と病院間の連携強化
- 医師・看護師の確保
- 経営形態の見直し
- 感染症拡大時の対応強化
- 経営の効率化
機能分化・連携強化の成功事例
山形県米沢市の事例
米沢市では、急性期を担う米沢市立病院と、回復期を担う三友病院を同一敷地内に建設し、一体的な運営を行っています。これにより、急性期病床を削減し、不足していた高度急性期病床と回復期病床の充実を図ることができました。さらに、救急搬送率の向上や、医師数の増加(74人→83人)といった成果が得られました。
地域医療連携推進法人制度の活用
病院単独での経営から、地域全体での医療提供へと移行するため、地域医療連携推進法人制度が注目されています。この制度の活用により、病院間での機能分担や業務連携を推進し、効率的な医療提供体制を整備することが可能となります。
主なメリット
- 病床の融通が可能になる
- 資金貸付や出資の活用
- 患者紹介・逆紹介の円滑化
- 医薬品や医療機器の共同購入
- 医療従事者の協同研修
所感
公立病院の赤字経営が続く中、持続可能な医療提供体制を構築するためには、経営強化プランの策定とその実行が不可欠です。自治体病院は単独での運営ではなく、地域全体での医療提供を視野に入れ、病院間の連携を強化することが求められています。
羽島市民病院においても、市民の安心・安全を確保するため、経営強化プランの策定・実施と効果検証を徹底し、持続可能な医療提供体制を確立することが重要です。
また、地域の医療機関と連携しながら持続可能な運営を目指していくことが重要であると考えられます。視察にて学んだことを活かし市政への提案をしていきたいと思います。
部活動の地域連携・地域移行と地域スポーツ・文化芸術環境の整備について
日付:2025年2月7日 13:00~14:15
講師:スポーツ庁、文部科学省 ご担当者様
部活動の地域連携・地域移行と地域スポーツ・文化芸術環境の整備について
スポーツ庁、文部科学省のご担当者を迎え、少子化による部活動の現状と課題、今後の改革の方向性について研修させていただきました。
少子化・人口減少による部活動の課題
日本では少子化が加速しており、それに伴い中学生の人口も減少しています。
- 1993年: 4,883,209人
- 2003年: 3,763,341人
- 2023年: 3,222,376人
- 2033年(推計): 2,586,496人(10年間で約20%減少)
このような状況の中、学校数の減少に加え、生徒数の減少により部活動の存続が難しくなっています。特に以下の競技では、部活動数の減少が顕著です。
※下記は部活動の一部を抜粋
- バスケットボール(2013年: 14,611 → 2023年: 13,933)
- サッカー(2013年: 7,062 → 2023年: 6,549)
- 柔道(2013年: 5,341 → 2023年: 4,178)
地域移行の必要性と目指すべき姿
少子化が進む中でも、子どもたちが継続してスポーツや文化芸術活動に親しめる環境を整備することが重要です。そのためには、学校に依存する形ではなく、地域全体で子どもを育てる意識を持ち、地域のスポーツ・文化資源を最大限活用することが求められます。
また、部活動を単なる学校の活動ではなく、地域住民全体が楽しめるスポーツ・文化活動へと発展させ、「まちづくり」の一環として推進することも重要です。
地域移行の取り組み事例(長崎県長与町)
長崎県長与町では、3つの中学校(約1,000人規模)において、段階的に部活動の地域移行を進めてきました。
- 移行の流れ: まず卓球部を地域クラブに移行し、2023年度には全面移行を達成。
- 財源確保: 国や県の補助金に加え、企業版ふるさと納税、企業からの寄付を活用。
- 活動の多様化: 地域住民向けのスポーツイベント(例: SUP〈サップ〉の体験プログラム)を実施。
今後の改革の方向性
政府は、自治体と連携しながら「部活動の地域連携・地域クラブ活動への移行」を進めるための環境整備を進めています。具体的には、
- 2026年までに: 全国の自治体で協議会の設置を完了予定。
- 2028~2030年度(改革実行期間前期): 休日の部活動を地域クラブへ移行開始。
- 2030年度以降: すべての学校部活動を地域展開へ移行。
また、移行を進める中で、「受益者負担と公的負担のバランス」や、「学校の設備や備品を地域クラブが活用できるか」といった課題の解決も求められています。
所感
部活動の地域移行は、単に学校の負担を軽減するだけでなく、地域全体でスポーツや文化芸術を支える仕組みを構築し、誰もが参加できる環境を整備することを目的としています。
しかし、中体連(日本中学校体育連盟)の全国大会縮小の動きに伴い、子どもたちの競技機会をどのように確保するかが課題として残ります。今後の動向を注視しながら、子どもたちが活躍できる場を提供するための取り組みを進めていくことが必要です。
地域移行が成功すれば、スポーツや文化芸術が「まちづくり」の一環として根付き、すべての市民にとって豊かな生活環境を提供することにつながると考えられます。
また、部活動の地域移行は、単に学校外へ移すだけではなく、スポーツ・文化芸術を通じたまちづくりの一環として捉えるべきだと感じました。
特に、高齢者や障害者を含めた地域交流の推進や、エンジョイスポーツの普及は、ウェルビーイング向上にもつながります。
今後も、地域と学校が連携しながら、より良い環境整備に向けた取り組みのために活動していきたいと思います。
防災庁の設置に向けた検討について
日付:2025年2月7日 14:15~15:00
講師:内閣官房防災庁設置準備室 ご担当者様
防災庁の設置に向けた検討
本日は、防災庁の設置に向けた検討について、内閣官房のご担当者様よりお話を伺いました。
防災庁設置の背景
第214回国会における石破内閣総理大臣の所信表明演説では、事前防災の徹底に向け、現在の内閣府防災担当の機能を予算・人員の両面で抜本的に強化するとともに、平時から万全の備えを行うために専任の大臣を置く「防災庁」の設置準備を進める方針が示されました。
想定される大規模災害
過去の大規模災害:
- 東日本大震災
- 令和6年能登半島地震
- 平成30年7月豪雨
- 平成28年熊本地震
今後想定される大規模災害:
- 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震
- 首都直下型地震
- 富士山噴火
- 南海トラフ巨大地震
防災庁設置準備アドバイザー会議の趣旨
政府は「本気の事前防災」の徹底と「災害発生時の司令塔機能」の強化を目指し、「防災庁設置準備アドバイザー会議」を立ち上げました。この会議では、政府として強化すべき防災施策の方向性や必要な組織体制について議論が進められています。
重点的に取り組む施策
- 避難生活環境・備蓄体制の抜本的改善:被災者が安心して過ごせる環境の整備
- 官民連携による防災力強化:災害専門ボランティアの育成、防災教育の充実
- 防災DXの推進:情報連携・共有の強化
防災庁の組織体制と役割
- 現在、内閣府防災担当には110名の職員が配置されているが、2025年度には220名へ拡充予定
- 災害発生時の初動対応は「内閣危機管理」が担い、その後、各フェーズに応じた防災・減災対策を推進
各フェーズに応じた防災・減災対策
事前防災
- 災害予防・脆弱性の軽減
- 事前の備え
災害時の対応
3. 事態対処
4. 復旧・復興
その他の重点施策
5. 防災DXの推進
6. 国民の意識啓発・防災教育・地域防災力の強化
7. 災害ボランティアの育成・強化
8. 防災技術の産業化・国際展開
防災庁設置に向けた議論の論点
- 近年の災害の教訓や環境変化を踏まえ、政府として強化すべき防災施策のあり方
- 政府一丸となった防災施策の推進において、防災庁が担うべき役割や体制
所感
今回の意見交換では、防災庁の設立に向けた方向性や体制について詳しく伺うことができました。石破内閣総理大臣の所信表明演説にもあるとおり、国として平時から万全の備えを行う「本気の事前防災」を徹底し、災害発生時の司令塔機能を抜本的に強化する方針が示されています。
防災庁の設置は、災害発生前の対策を強化し、減災の観点からも非常に重要な取り組みです。羽島市においても、事前準備をしっかり進め、将来の災害に備えた対策を講じていければと思います。
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